意思能力に影響する病気とは?不動産売却や相続で注意したいポイント
意思能力に影響する病気とは?不動産売却や相続で注意したいポイント
「親が最近、同じ話を何度もするようになった」
「物忘れは増えたけれど、不動産のことはまだ本人に任せて大丈夫なのだろうか」
高齢のご家族について、このような不安を感じる方は少なくありません。
不動産の売却や相続の場面では、「誰が相続するか」「いくらで売れるか」といった話に目が向きがちですが、実はその前提として非常に重要になるのが“意思能力”です。
たとえば、次のような手続きでは、本人が契約内容を理解したうえで判断できる状態であることが前提になります。
- ・自宅を売却する
- ・遺言書を作成する
- ・相続放棄をする
- ・生前贈与を行う
もし判断能力が大きく低下した状態で契約を進めてしまうと、あとから契約の有効性が問題になることもあります。
今回は、「意思能力」に影響する代表的な病気や、不動産・相続で注意したいポイントについて整理していきます。

そもそも「意思能力」とは?
意思能力とは、簡単に言えば、「自分が行う契約や手続きの意味を理解し、判断できる能力」のことです。
たとえば不動産売却であれば、次のような点を理解したうえで、「売却する」という意思を持っている必要があります。
- ・家を売ると所有権が移ること
- ・売却後は自由に住めなくなること
- ・代わりに売却代金を受け取ること
ただし、ここで注意したいのは、単純に高齢だから意思能力がない、というわけではないことです。
実際には、80代・90代でもしっかり判断できる方は多くいます。一方で、病気や症状によっては、比較的早い段階から判断力が低下するケースもあります。
大切なのは年齢ではなく、契約内容を本人がどこまで理解できているかです。
意思能力に影響する代表的な病気
認知症
もっともよく知られているのが認知症です。
認知症にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとしては、次のようなものがあります。
- ・アルツハイマー型認知症
- ・レビー小体型認知症
- ・脳血管性認知症
症状の出方は人によって異なりますが、次のような変化がみられることがあります。
- ・物忘れが増える
- ・同じ話を繰り返す
- ・日付や場所が分からなくなる
- ・判断に時間がかかる
- ・金銭管理が難しくなる
特に不動産の契約では、金額も大きく、内容も複雑です。そのため、日常会話が普通にできていても、「この家を売ると今後どうなるのか」「誰にいくらで売るのか」といった重要な部分までは十分理解できていないケースもあります。
実際に、親族から見るとまだしっかりしているように見える状態でも、不動産会社や司法書士とのやり取りの中で、理解力の低下が明らかになることは珍しくありません。
脳梗塞・脳出血などの脳血管疾患
脳梗塞や脳出血のあと、判断力や理解力に影響が出るケースもあります。
身体の麻痺に目が向きがちですが、次のような変化が現れることもあります。
- ・話の理解が難しくなる
- ・考えを整理するのに時間がかかる
- ・感情のコントロールが難しくなる
また、症状が体調や時間帯によって変動する方もいるため、家族だけでは判断が難しいケースもあります。不動産売却では契約内容の理解が重要になるため、表面的な会話の受け答えだけで判断せず、慎重に進める必要があります。
せん妄
高齢者では、入院や手術、環境変化などをきっかけに、一時的に意識が混乱する「せん妄」が起こることがあります。
これは認知症とは別の症状で、次のような状態がみられることがあります。
- ・急に話が噛み合わなくなる
- ・幻覚や思い込みが強くなる
- ・夜になると混乱する
一時的な症状で回復する場合もありますが、本人の状態が不安定な時期に契約を進めると、後から契約の有効性が問題になる可能性もあるため、注意が必要です。
実際によくあるトラブル
意思能力の問題は、契約時には表面化せず、あとから親族間の対立につながるケースがあります。特に多いのが、次のようなケースです。
「本人は理解していなかった」と主張される
たとえば、長男が中心になって親の自宅売却を進めたあと、別の兄弟から、
「母は内容をちゃんと理解していなかったのではないか」
「無理に話を進めたのではないか」
といった争いになることもあります。
特に、次のような状況では、トラブルにつながりやすくなります。
- ・相続人同士の関係が良くない
- ・一部の親族だけで話を進めている
- ・遺産分配に不満がある
不安がある場合は、早めに専門家へ相談しながら進めることが大切です。
判断能力が低下した場合、不動産は売れない?
本人に十分な意思能力がないと判断される場合、不動産売却は簡単には進められません。
その際に検討されるのが「成年後見制度」です。
成年後見制度とは、判断能力が低下した方に代わって、後見人が財産管理や契約手続きを行う制度です。
ただし、この制度には注意点もあります。たとえば、次のような点です。
- ・家庭裁判所への申立てが必要
- ・手続きに時間がかかる
- ・後見人が自由に売却できるわけではない
- ・場合によっては継続的な費用負担が発生する
想像以上に負担が大きくなる場合もあるため、判断能力が大きく低下してから慌てるよりも、早めに準備や相談を始めておくことが重要です。
成年後見制度は、判断能力が低下した方を支えるための制度ですが、「使えばすぐに不動産を売却できる」というものではありません。手続きの流れや必要な期間も含めて、事前に確認しておくことが大切です。
「まだ元気なうち」にできること
最近では、将来の判断能力低下に備える方法を早めに検討する方も増えています。
- ・家族信託
- ・任意後見契約
- ・遺言書作成
たとえば、「将来認知症になった場合は、この子に管理を任せたい」という形で準備しておけば、あとで家族が動きやすくなる場合があります。
もちろん、家族構成や不動産の状況によって適した方法は異なります。
特に不動産は、一度判断能力が低下すると手続きが大きく制限される場合もあるため、早めに方向性を整理しておくことが大切です。
まとめ
意思能力は、不動産売却や相続を進めるうえで非常に重要なポイントです。
認知症だけでなく、脳梗塞やせん妄など、さまざまな病気や症状によって判断能力が影響を受けることがあります。
また、「会話は普通にできるからまだ大丈夫」と周囲が思っていても、契約直前で問題が表面化するケースも少なくありません。不動産は、金額が大きいだけでなく親族間の感情も絡みやすいため、あとから揉めると長期化しやすい分野です。
- ・意思能力は、不動産売却や相続手続きの前提になる
- ・認知症、脳血管疾患、せん妄などが判断能力に影響することがある
- ・日常会話ができても、契約内容を十分理解できているとは限らない
- ・判断能力が低下すると、不動産売却の手続きが大きく制限される場合がある
- ・不安がある場合は、早めに状況を整理しておくことが大切
判断能力の問題は、ある日突然始まるというより、少しずつ表面化してくることも多いものです。
「今すぐ売却する予定はない」という場合でも、早めに状況を整理しておくことで、将来の選択肢が広がることがあります。
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