介護費用と相続 家族で知っておきたい「お金と不動産」の整理術
介護費用と相続 家族で知っておきたい「お金と不動産」の整理術
介護と相続は切り離せません。不動産の扱いと費用の分担を“見える化”し、トラブルを防ぐための実践ポイントを整理します。
はじめに
親の介護をきっかけに、家計や不動産の課題が一気に表面化することがあります。「誰が費用を負担するのか」「実家をどう扱うのか」——この2つを曖昧にしたまま進めると、介護の最中や相続時に深刻なトラブルに発展することも少なくありません。
特に、親が所有する家に子が同居している・施設入所後に空き家になるといったケースでは、不動産をどう扱うかが介護費や相続全体の鍵を握ります。この記事では、介護費用と不動産の関係を整理し、家族間のトラブルを防ぎながら安心して備えるための実践的なポイントを解説します。

1. 介護費の「支払い方」が相続の火種になる
介護は長期化するほど費用が膨らみます。在宅介護では月平均5〜10万円、施設入所では月20〜30万円以上が目安とされ、「子どもが立て替えた費用」「親の年金や貯金からの支出」など、支払いの経路が複雑になりがちです。 問題は、誰がどれだけ出しているかが曖昧なままになっていること。よくあるケースとして、
- ・一人の子が主に介護費を負担していたのに、相続で他の兄弟と平等に分けられてしまう
- ・遠方の家族が実情を知らず、「介護費を使いすぎだ」と誤解する
- ・親の口座から費用を出していたが、後から「使い込みでは?」と疑われる
・可能であれば「介護費用専用口座」を作る
・相続時には“寄与分”として正当に評価されるよう記録を残す
2. 介護資金のために実家をどう活かすか
親の施設入所後、空き家になった実家をそのままにしておくと、固定資産税・管理費・老朽化のリスクが重なり、年間数十万円単位の負担が発生します。一方で、実家は介護資金を支える重要な資産になり得ます。「売る・貸す・残す」を、親の意思と家族の希望の両面から検討しましょう。
(1)売却して介護費に充てる
施設入所の一時金や継続費用を捻出する現実的な方法。ただし、親名義のままでは本人の同意と判断能力が必須です。認知症発症後は手続きができなくなり、成年後見制度の利用が必要になります。
不動産の豆知識: 売却の際には「3,000万円特別控除」などの税制特例を確認しましょう。親の居住用財産として適用できれば、譲渡所得税を大幅に軽減できます。
(2)賃貸・サブリースで活用
賃貸収入で介護費をまかなう形。古い家でも「定期借家契約」や「短期マンスリー」など柔軟な運用が可能です。自治体によっては「空き家活用補助金」が利用できる場合もあります。
(3)リースバック(売却+賃貸)
親が住み慣れた家にそのまま住み続けながら、まとまった資金を得る方法。ただし、賃料や買戻し条件などの契約内容には注意が必要です。
・名義人が誰か(親・共有・子)を明確に
・「介護費」「固定資産税」「家の維持費」を総合比較して決定
3. 「介護した人が損をしない」ための法的整理
介護を担った人の努力が、相続で正当に評価されないケースは少なくありません。その不公平を防ぐために、民法では「寄与分」や「特別寄与料」という制度が設けられています。
- 寄与分(相続人の場合):相続人が親の療養看護や財産維持に特別な貢献をした場合、他の相続人より多く財産を受け取ることができる。
- 特別寄与料(相続人以外の場合):嫁・婿など、法定相続人でない人でも、実際に介護を行った場合に金銭を請求できる。
これらの制度は申立てがなければ認められず、証拠となる記録の有無が判断の鍵となります。
不動産に関する注意: 介護に貢献した人が実家に住み続けるケースでは、「共有名義」や「使用貸借(無償での使用)」の扱いをどう整理するかが重要です。登記を曖昧にしておくと、将来の売却や建て替えができなくなることもあります。相続後の活用まで見据えた登記整理を行いましょう。
・遺言書に「○○には介護の貢献があったため、これを考慮する」と一文を入れる
・実家に関わる場合は、登記名義・共有割合・使用権(使用貸借等)の整理を早めに行う
4. 介護と相続を“別問題”にしない準備
不動産の名義や介護費負担を後回しにすると、相続開始後に話し合いが難航し、資産の活用や処分ができなくなるリスクがあります。今のうちに落ち着いて整理しておきましょう。
2. 介護費をどう分担するか(現金・不動産・預金)
3. 名義・遺言・税金対策を誰が主導するか
不動産会社や司法書士など第三者の意見を交えつつ、現実的な計画を立てることで、“争族”を防ぎ、介護と相続の両立をスムーズに進められます。
まとめ
介護と相続は、「お金」と「家」をどう扱うかという共通のテーマを持ちます。介護が始まった段階で、財産や名義を整理しておくことは、将来のトラブルを防ぐ最大の準備です。
- ・介護費の支出を可視化し、公平性を保つ
- ・実家の活用方法を早めに決め、負担を軽減する
- ・寄与分・遺言などの制度で貢献を正当に評価する
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