家族で話しておきたい相続のこと トラブルを防ぐ3つの準備
家族で話しておきたい相続のこと トラブルを防ぐ3つの準備
相続の混乱を避けるために、家族で早めに取り組みたい「見える化」「不動産の話し合い」「専門家連携」の3ステップを解説します。

はじめに
相続トラブルは富裕層に限った話ではありません。一般の家庭でも、不動産や預貯金をめぐって話し合いが長引くケースが多く見られます。問題の多くは、「亡くなってから慌てて話し合う」ことにあります。
相続は“事後対応”ではなく、“事前準備”が重要です。この記事では、相続の混乱を防ぐために、家族で早めに取り組んでおきたい3つの準備を紹介します。
① 財産の全体像を「見える化」する
相続を円滑に進めるためには、まず何を・どれだけ持っているかを家族全員が把握することが欠かせません。預貯金、不動産、保険、有価証券などの資産だけでなく、借入金や税金の未払いといった“負の財産”も含めて整理しておくことが大切です。
ポイント
- ・銀行口座が複数ある場合は一覧にまとめておく。
- ・通帳・印鑑・権利証などの保管場所を家族に共有しておく。
- ・「エンディングノート」や「財産目録」を作成し、年に一度は更新する。
特に近年は、ネット銀行・証券アプリ・電子マネー・暗号資産など、“目に見えない資産”が増えています。家族が存在に気づかないまま放置されたり、手続きが遅れたりするケースも少なくありません。紙とデジタルの両方を整理しておくことで、引き継ぎ漏れを防ぐことができます。
財産の全体像を共有しておくことは、「誰がどれを相続するか」を決める前の重要なステップです。不動産を複数所有している場合は、固定資産税評価額や将来的な修繕費も一緒に把握しておくと安心です。
② 不動産の扱いを早めに話し合う
相続財産の中でも、不動産は最もトラブルになりやすい資産です。現金のように分割できず、共有名義にしてしまうと、後から「売りたい」「残したい」で意見が割れることがあります。
共有名義のリスク
- ・売却やリフォームのたびに全員の同意が必要になる。
- ・誰かが亡くなったり疎遠になったりした場合、手続きがさらに複雑化する。
- ・固定資産税や修繕費の負担割合をめぐって不公平感が生じやすい。
実際には、「兄弟が遠方に住んでいて話し合いが進まない」「古い実家を誰が管理するか決まらないまま数年が経過した」といったケースも少なくありません。共有名義は一見公平に見えても、結果的に“誰も動かせない不動産”になってしまうことがあります。
対策の例
- ・将来住む予定がある人を中心に単独相続+代償分割を検討する。
- ・親が元気なうちに、「この家をどうするか」を家族で話し合っておく。
- ・利用予定がない場合は、早期売却や賃貸活用を視野に入れる。
相続後に対応するほど、老朽化や維持費の負担が増加します。「まだ早い」と思う段階から方向性を話し合っておくことが、家族関係を守る最善の準備です。
▶ 空き家や使わない不動産については、こちらの記事もぜひご覧ください
空き家を“負動産”から資産へ 相続後の新しい選択肢
③ 専門家と一緒に“仕組み”を整える
家族内での話し合いは大切ですが、制度や税金の理解が不十分なままだと、結果的に負担を増やしてしまうこともあります。不動産の評価、登記、税金などはそれぞれ専門的な知識が必要なため、早い段階で専門家に相談することが安心です。
主な相談先
- ・相続手続きや遺言書の作成支援:行政書士・司法書士
- ・相続税・贈与税の試算、節税対策:税理士
- ・資産価値の査定、売却・活用の提案:不動産会社
また、一部の財産の生前贈与や、信頼できる家族に管理を委ねる「家族信託」を活用することで、将来的なトラブルを未然に防ぐこともできます。こうした制度は、判断力のあるうちに早めに準備しておくことが大切です。
「誰に・何を・どのように残すか」を明確にしたい場合には、遺言書の作成も検討しておきましょう。
遺言書の種類と書き方の基本はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
相続の準備で大切なのは、「何を残すか」よりも「どう共有しておくか」です。
- 1.財産の全体像を見える化する
- 2.不動産の扱いを早めに話し合う
- 3.専門家と一緒に仕組みを整える
この3つを意識するだけで、家族間のトラブルを大きく減らすことができます。“争族”を防ぐ第一歩は、話しにくいことを少しずつ共有することです。
ディスカバリサーチでは、相続前後の不動産整理や生前対策についてもサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。
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